| ライト、ジョセフ | |
| Joseph Wright of Derby (1734-1797) | |
| イギリス ロマン主義 | |
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| 空気ポンプの実験 An Experiment on a Bird in the Air Pump | |
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1768 oil on canvas, 182.9x243.9cm, The National Gallery, London, ロンドン、ナショナル・ギャラリー |
| 1650年、ドイツのマクデルブルクで空気ポンプが発明された。その約10年後、ボイルーシャルルの法則によって、イギリスで最初の空気ポンプが作られた。 それから、約一世紀後、改良され、価格も手ごろになった空気ポンプは、知識人の書斎に普通に見られるようになり、哲学者(科学者)たちは、実験装置を携えて、イギリス各地を実演講義して歩いた。 この絵は、その実験講義の現場である。 窓の外には、月が見えているので、時間は夜である。 中央のガラス鉢の中に、ボタンインコが閉じ込められている。ガラス瓶の中は空気が抜かれ、真空状態になっている。ボタンインコは仮死状態である。 中央の科学者が手を上げている。彼が、空気を送り込むのである。ぎりぎりの瞬間に空気を送り込めば、インコは蘇ることができるのである。もし、少しでも遅れれば、インコは死んでしまう。 こういった小動物を使った実験は、あまりに残酷なので、非難を浴びていた。そこで、小動物の代わりに、人口肺や浮き袋なろどを使っていた。しかし、ダービーは、あえてここに、小動物を描きいれた。しかも、ボタンインコは、当時、貴重な鳥であった。悲劇性と緊迫感を高めるためである。 右横のピンクのドレスを着た少女たちは、鳥の運命を思って、心配そうに顔をしかめたり、顔をそむけている。 科学者の左横には、恋人たちがいる。実験など気にも止めていない。 一番左の二人、若者と少年、実験に夢中である。 テーブルの右端は老人。静かに、何か考えている。おそらく、鳥の死と自らの死を重ね合わせているのかもしれない。 科学者は髪を振り乱し、何かに憑かれたような顔つきである。この何かに憑かれたような科学者のイメージは現代でも通用する。 インコが入っているガラス瓶の下に、ガラスの器がある。中身は骸骨ではないか、という説がある。光源は、このガラスの器に、隠れているキャンドルらしい。 生のはかなさを表す「ヴァニタス」のテーマである。キャンドルは時の経過を表し、髑髏はその結果を表す。 テーブルを囲んでいる老若男女は、少女(幼年)、恋人たち(青年)、老人(老年)という組み合わせで描かれる「人生の諸段階」を形成している。「人生の諸段階」のテーマは、「ヴァニタス」同様、すべてのものにやがて死が訪れる、という人生の虚しさを表している。 ライトは、こういったテーマを、化学実験という、全く新しい主題の中で描いたのである。 また、「ヴァニタス」や「人生の諸段階」という観点から考えると、鳥は、キリスト教的意味合いにおいて、人間の魂の象徴である。 人間の魂が、科学者に繰られている、というようにも考えることができる。しかし、この時代に、すでにライトが、そんな19世紀から20世紀的な考えかたをしたとは思えないが、現代の我々に通じるものがこの絵にあるとしたら、こういった科学と人間の関係においてであろう。 |
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| 参考文献: 『名画への旅16』 講談社 | |
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