ライト、ジョセフ
Joseph Wright of Derby (1734-1797)
イギリス ロマン主義

賢者の石を求める錬金術師 The Alchemist in Search of the Philosopher's Stone
1771
Oil on canvas, 127x101.6cm, Derby Museums&Art Gallery, ダービー美術館
ライト以前に化学実験の現場を描いたものとして、錬金術師の仕事場を主題としたものがある。

錬金術師は、非金属を金に変えたり、不老不死をもたらす物質、「賢者の石」を生成しようと、日々、実験を繰り返していた。

16−17世紀になると、かなわぬ夢を求める錬金術師の愚かしさや、山師的な性質がクローズアップされるようになった。オランダ・フランドル絵画に多く登場していた。

1676年、燐が発見された。ダービーの絵の横には、詳細なタイトルが付けられいる。「賢者の石を求めている途中で燐を発見し、いにしえの占星術師たちにならって、実験が成功するよう祈祷する錬金術師」である。

燐が発見されると、燃焼の研究がすすみ、後に、ラヴォワジェが酸素の存在を解明するに至った。(ダヴィッドがラヴォワジェ夫妻の肖像を描いているが、その横には、実験装置である鐘形ガラス器が描かれている。)

ダービーの絵には、もう、山師的で、妄想にとりつかれたような錬金術師の姿はない。化学は、その合理性において、迷妄的な錬金術師を一掃してしまった。

聖人のような姿で、ガラス器から噴出す、青白い燐光を、畏怖の念を持って見ている錬金術師は、科学への信仰をも表しているように思える。
参考文献: 『名画への旅16』 講談社
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