ファン・エイク
Jan van Eyck (1390-1441)
フランドル  初期フランドル派

アルノルフィニ夫婦
1434
Oil on wood 81.8 x 59.7 cm (32 1/4 x 23 1/2 in.)
ロンドン・ナショナル・ギャラリー


レンブラントの「ユダヤの花嫁」同様、作者自身による題名はわかっていない。この絵に関しては多くの説がある。

パノフスキーが解釈した、アルノルフィニ夫妻の結婚証書としての絵で、画家はその場所に立ち会っている、というのが一般的である。多くのキリスト教の象徴が用いられている。

歴史家は、描かれている女性が、「質」の役割で、契約結婚とも言えるという。

フェミニストの見方では、女性は男に頭を垂れている。男は直立して右手を上げている。これは、女性を拒否しているそぶりにも見える。それに対し、女性は手のひらを見せて、受容性を表している。

いろいろな解釈があるが、ここでは一応、一般的な解釈を上げていく。

夫妻の間にあるシャンデリアには、一本だけろうそくが灯されている。これはすべてを見通す神の目を表している。あるいは、ベッドがあるので、子孫繁栄を促すろうそくでもある。

ベッドは、特に王侯貴族の間では、血を絶やさない、という重要な意味があった。赤は情熱を象徴する。

ジョバンニ・デ・アッリゴ・アルノルフィーニはイタリア出身の銀行家で、1421年頃、ネーデルランドのブルッヘに移り住んだ。

服装は当時の宮廷の流行。フィリップ善良公の宮廷で働き、後に、ノルマンディの財政官になり財をなした。

ジョヴァンナ・チェナーミは、イタリアの裕福な家の出身であった。しかし、子宝に恵まれなかった。

緑色の衣服を着ている。緑色は献身を表す。

鏡の隣に水晶のロザリオがある。水晶は純潔の象徴である。ロザリオは新郎が新婦に贈る。当時は典型的な贈り物。

鏡の上部には、美しい署名がある。「ヤン・ファン・エイクここにありき。1434年」と描かれている。

右端に見えるのが、聖マルガレータである。ペッドサイドに掘られている。足で竜を踏みつけたマルガレータは、妊婦の守護聖人である。

箒があるので、主婦の守護聖人、聖マルタという説もある。

凸面鏡は、当時、特にお店で使われた。全体が見渡せるので、盗み防止のためである。鏡は店の主人の目であった。そのことから、キリスト教では、神の目として解釈された。

鏡の周囲には、キリストの十字架の道行きの14場面が描かれている。

鏡の中には、ファン・エイク自身が描かれているとされる。

15世紀、2人の証人がいれば、結婚はどこでもできた。鏡の中に2人の証人を描いているので、この絵は、結婚の証明書とされている。

キリスト教の結婚式では、手をつなぐことが、2人が一つになったことを意味する儀式であった。

オレンジは南国の果物で、当時、北ヨーロッパでは贅沢品であった。アルノルフィーニがイタリア出身であったことを示すと同時に、エデンの園の禁断の果実を示す。

犬は忠実と地上の愛を表す。

犬の毛並みの筆致は、奇跡ともいえるほどの離れ業である。

脱ぎ捨てられたサンダルは、結婚の宗教的儀式を表す。

ジョヴァンナのサンダルは、ベッドの近くにある。裸足で床に立つのは、献身を表す。

ファン・エイクに戻る

ホームページ | 西洋絵画 | 女流画家 | 聖書の物語 | ギリシャ神話  | 文学