ジョルジョーネ
Giorgione (1477-1510)
イタリア   盛期ルネサンス、ヴェネツィア派

3人の哲学者  The Three Philosophers
c.1508.

Oil on canvas. 121x141cm

Kunsthistorisches Museum, Vienna, Austria
ミケランジェロの友人セバスティアーノ・デル・ピオンポによって完成させた作品である。

主題が何であるか、ジョルジョーネはあまり気にしていないようである。それよりも、内面を重視している。このあたりも、ラファエル前派(後期)に受け継がれた要素である。

最初「東方三賢王の礼拝(マギ)」を描くつもりであった。三人の王がキリストの降誕を祝うために、旅に出る話である。マギはギリシャ語で「マゴス」という。聖書にもあるが、2世紀にできた伝説で、王であると考えられたり、名前が考案されたり、若者、壮年、老年の人生の三世代を表す姿で描かれたりする。

ジョルジョーネはそこから出発し、マギが天文学者であったとされることから、六文儀で星を観測し、その意味を考える天文学者の姿となっていった。

他方では、人生の三世代をテーマにしてもいる。

真剣な面持ちの若者。中央の落ち着き払った人物は、何かもの言いたげである。物質的に満たされ、美しい絹の衣装をまとった老人。

若者の衣装はシンプルである。そして孤立している。若者はしばしそうである。夢と希望を語る相手を探しているようである。

若者に比べ、二人の大人は内向きである。語り合っているように見えるが、実は孤独なのである。若者のように熱意はない。しかし、自分たちの問題をそれぞれ重要に受け止めて、熟慮している。

中央の壮年の男性は、すぐにでも仕事にとりかかれる態勢である。

老人は思考を象徴する天体図を手にしている。

しかし、3人がこの絵の中心ではない。残りの部分を占めている暗い岩は洞窟になっている。そして、中央には光に照らされた豊な風景が広がっている。

二つの選択を迫られているのである。未知の暗い洞窟への冒険。すなわち、精神世界への旅。若者がじっと見つめている場所である。

もう一つは田舎の美しさの中への旅。すなわち現世とそれがもたらす見返りを求めての旅である。

選択を迫られている三人は、相談し合っていない。個人の責任でそれぞれ熟考しているのである。

「個人」という概念の発達は、商業の発達なくしてはない。オランダがそうであったように、ヴェネツィアにおいても、商業の発達による「個人」の発達があったことが、この絵に伺える。

ある説では、老人はアリストテレス哲学を示唆し、中央の人物は東洋風の衣装から判断してイスラム思想を、そして若者が手にしている六分儀は、西洋の「科学」を示唆しているという。

絵自体は、風景が秋っぽく、引き締まる空気は全体を引き立てているし、詩情にあふれ、内面の重みを描いている。実はこれが、後に引き継がれていく要素でもある。

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