ボッティチェリ
(1445-1510)
イタリア  初期ルネサンス、フレンツェ派

ヴィーナスの誕生  The Birth of Venus
1485-86, Tempera on canvas, 172.5 x 278.5 cm, フィレンツェ ウフィツィ美術館 the Galleria degli Uffizi , Florence
ルネサンス期、イタリア人をとらえたのは、古代ギリシャ・ローマの栄光であり、その神話であった。

イタリア人たちは、古代ギリシャ・ローマの神話の中に、何か深い、神秘的な真実があると信じた。

海から現れるというヴィーナスの物語は、美の神聖なシンボルとなったのである。

彼の描くヴィーナスは、首が長かったり、肩が極端に落ちていたり、左腕が不自然だったりと、マザッチョが到達した正確さに欠ける。

しかし、全体では全く不自然さを感じさせない。それほど美しい絵なのである。

ボッティチェリが大切にしたかったのは、写実的な、科学的な正確さではなく、どこまでも優美で繊細な愛の女神である。それは科学とは対立する、自然の姿なのである。


『ビーナスの誕生』は、天の国から「愛」という贈り物を持ってきたヴィーナスが、我々の国の岸辺へと漂い着いた姿なのである。



以下は登場する神々である。

ヴィーナスは貝に乗って、バラの花に囲まれている風の神ゼフュロスとクロリスが、岸辺へと運んでいる。

岸へ上がろうとするヴィーナスに、妖精が彼女に赤いローブを渡している。

左端にいるのは、西風の神ゼピュロスとニンフのクロリスである。西風は強く息を吹き、クロリスは柔らかなため息で、ヴィーナスを岸辺へと運ぶ。

右端は果樹園のある岸辺である。ギリシャの理想郷ヘスペリデス、黄金のりんごの園である。そこでは4人の姉妹がいて、この果樹園を守っている。

ニンフはギリシャ神話では、ヴィーナスに仕える三人のホーラーたち(季節と盛衰と秩序の女神)の一人で、季節の女神である。

彼女の華やかなドレスと、ヴィーナスに差し出しているローブには、ヒナギク、桜草、ヤグルマギクなど、「誕生」の主題にふさわしい、春の花が刺繍されている。

季節の女神が付けている花輪は、ヴィーナスの聖木である青みがかった暗い緑の天人花である。腰に巻いているピンクのバラは、ボッティチェリのもうひとつの代表作『春』に出てくるフローラのようでもある。

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