ベッリーニ
 (1433−1515)
イタリア  ルネサンス、ヴェネツィア派

牧場の聖母子 The Madonna of the Meadow
c. 1505
Transferred from panel
ロンドン・ナショナル・ギャラリーNational Gallery, London
ベリーニは、色彩に固執する、最初のヴェネツィアの画家であった。色彩の中では、人間が中心なのではなく、人間は自然の一部であるという真実が表現される。

すべての画家が母親を持っている。聖母子像には、この母と子という、人間心理が、如実に表れてくる。これは、「謙譲の聖母」としてあらわされる。

マリアの衣装は、青と赤である。玉座にではなく、地面に直接座るマリアに、青と赤が映える。地面に座るマリアは、14世紀からの伝統で、「謙譲の聖母」である。マリアは衣服と共に、ピラミッド型で、モニュメンタルであるが、謙譲さが強く出ている。このリアルさはベッリーニの技である。象徴と現実。この相反する二つを自然の光で調和させ、統一したのである。

マリアの左端の木の上に、大きなカラスがいる。「死」の象徴である。しかし、カラスは、「死」同様、自然の一部なのである。対する聖母子は、「死」のあとに「平安」があることの象徴である。

カラスが止まっている木の下に、蛇と戦う白鷺がいる。これは、善と悪の戦いを意味している。白鷺の戦いは、キリストの苦悩を表し、蛇は、エデンの園に入り込んだ蛇(悪)を意味しているともされる。

右側には、普通の生き物が、日常の姿で描かれている。牡牛が鋤を引き、農民がその後ろを歩いている。聖母子によって、きれいに、「死」と隔絶されているのである。

農民と牛の後ろには、町の城壁が見える。町で営まれる政治や商業は、左側と聖母子の語る、「死」というテーマから遠ざけられている。ベッリーニの現実は、この町の中にある。天使が飛びかう閉ざされた庭ではない。

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